セ・サ・ミ 日記

−2000年2月−


2000.02.27

鴻池歌会。亭主御執心のフラメンコのビデオ鑑賞しつつ即詠。「密
会の記事パルプまで解されて再生紙製聖書並ぶ」佐藤仁。毒の効い
た諧謔の一首がテンションを盛り上げる。「内攻性かたみに搦めあ
ふ夜半の蝸牛養殖場全焼」魚村晋太郎。生理的不安感をひきずりだ
す調べ。内攻性の造語への評価もあったが清記者、邦雄の単純ミス。


2000.02.26

ワイン会がさしずめ現代の茶会ならば集う面々、人もすなる歌仙な
るもの巻かんや。という流れでメンバー俳句、和歌、初心者なれど
文字通り『初歌仙』の巻。唯一人経験者の私の捌きでは素面でも酩
酊状態。シャトー・セルタンとサッシカイア呷りつつ、初折表裏ま
で進行。サヴィニー・レ・ボーヌで次回、挙げ句までを約して乾杯。


2000.02.21

躑躅は好きではない。辺見庸『独航記』のエッセイの躑躅には嘔吐。
犬の殺処分所に赤々と咲く躑躅は死んだ犬の灰を肥料にしてさら
に色艶を増すという。『もの食う人々』『ゆで卵』はじめ彼の文章
は私を黄昏時の見えざる地層へ誘拐していく。強姦すれすれの生理
的暴行に心理が粟立つ。どす黒い血液のドクドクと流れる音がする。


2000.02.19

スーダンの大きな地図をもらった。うれしくてすぐ壁にはった。ア
フリカは胡麻の産地。ビジネスに必要、それだけのことで別に旅す
る目的でもない。なのになぜか地図には心ときめく。折しも宇宙飛
行中の毛利さんはレーダー観測で地球の立体地図を作成中。21世
紀はブラックホール迷宮案内図ぐらいでないと少年の胸は弾まない。


2000.02.17

フランス映画『奇人たちの晩餐会』。晩餐会のルールは至ってシン
プル。必ず一人奇人を連れてくること。誰もが認める奇人を連れて
来た者が勝者となる。こんなタイトルとストーリー紹介を知ったら
即、観にいかずにはおれない。今度の自分達のパーティの参考に、
なんて。まあ予想通りのしゃれた展開、奇人ぶりがちょい物足りぬ。


2000.02.15

三人吉三の「月も朧に白魚の」や芭蕉の「明けぼのやしら魚白きこ
と一寸」はしらうお。踊り食いするのはしろうお。わかっててもす
ぐごっちゃになるのを整理するコツ。しろうおは素魚と書く。体が
透き通っている。で、すぐ裸踊りしたがる奴は素人、と覚える。裸
のまんまさっと飲みこんでしまう食感がいのち。どっちも春告げ魚。


2000.02.14

同じ短歌結社『玲瓏』所属の楠見朋彦が候補になっていた芥川賞の
発表。結果はダメだったが選評では池澤、古井両氏が押していた。
候補作『零歳の詩人』には小説の枠を超えたエネルギーが噴出して
おり、おおいに期待していただけに残念。受賞作藤野千夜『夏の約
束』はホモカップルの軽い日常の話、サラサラ系の劇画にありそう。


2000.02.13

京都古川町市場の蕎麦屋『なかじん』の粗挽きそばは、そばのうま
さをあらためて教えてくれる。塩で食べてくれ、という。ほかでも
塩をだす蕎麦屋もあるが正直つゆの方がうまかった。しかし、しか
し、なかじんの蕎麦は実にゆかしい甘みが口中にひろがってくる。
そばは単純だ。打ち手がそばをどれだけ好きかだけにかかってくる。


2000.02.12

ブリジッド・バルドー、カトリーヌ・ドヌーブ、ジェーン・フォン
ダと並べると学生時代が甦る。ましてこの3人を順に結婚生活の相
手にできるなんて監督ロジェ・バディムとは一体どんな男かと好奇
心をくすぐられたものだ。『悪徳の栄え』も原作サドを稀代の色男
がどう映像に料理するのかワクワク。癌のためパリで死去。72歳。


2000.02.11

P句会。野生の恋猿が群れる会場。朗読で果敢な試みをする詩人,
假奈代「全国の枕の数より淋しくて」が栄光の逆選3点浴びて沈没。
まり絵「正客は睡魔をつめたぬいぐるみ」は単純な比喩と思いきや
実際大きなぬいぐるみを座らせたとか。ならば奇妙な味。「横着な
右手に春の灸据ゑる」義久。「海底に蟹がもがける抜歯あと」大象。


2000.02.10

若ごんぼ食べた。この歯ごたえたまらんわ。もうこんな季節になっ
てんな。東京のえらい料理のせんせから、若ごぼうって何?と聞か
れてびっくりしたわ。あとで八百屋のおっちゃんに聞いたら、なん
と大阪八尾の特産やて。そお言うたら最近泉州の水ナスて急に全国
区になってしもたけどあんなんなったらあかん。若ごんぼ秘密結社。


2000.02.07

人間の体が形成される過程で、指と生殖器の発生を司るのは同じ遺
伝子。だから男の指をみるだけでセクシュアルになってしまう、と
いうのは『シンメトリーな男』を書いた竹内久美子さんの新説。じ
ゃあ指の太いのは・・なんて下ネタではありません。男女共、世に
指フェチは多いが私は水掻きフェチ。指の間の薄い膜を思うと・・。


2000.02.06

氏家幹人『大江戸死体考』は江戸時代の日本人の暮らしを生々しく
伝えショッキングである。大雑把にいってしまえば街中死体がごろ
ごろで、武士は刀の試し斬りで死体どころか生き胴も使ったとか。
土壇場とはこの試し斬りの肉体を据える壇のことである。なるほど
生きておればまさに土壇場。平成世紀末は死体ミイラ化が同時多発。


2000.02.04

朝のテレビで、なんやどんくさいなて思てんのにずっと続いてて、
とうとう視聴率20%なったからゆうて「おはよう朝日です」がム
ック版雑誌まで出してんて。朝のうんこみたいにだして終わりやっ
たら、もったいないもんな。タレパンダそっくりのすご腕プロデュ
ーサー久保田はんが、和田萬のことも書いてくれたはる、おおきに。


2000.02.03

「豆撒きや鬼の逃げ場も物あふれ」央里布、の節分ショック塾。も
う春立つと言いつ、季語と実感のずれ楽しむのも句会でこそ。兼題
の猫も春は恋猫ばかり「恋猫の面変りして戻りたり」一計。伏兎「
風槌に打たれる梅の香太し」の造語、風槌もいいが、水無「老け猫
ももとは小猫の夢炬燵」のほのぼの造語だけで、これ一番をゲット。


2000.02.01

映像のサブリミナル効果の具体例を知りたい。食欲、性欲の喚起に
効果ありで、すでに日本でもテレビ宣伝で知らぬ間に流されている
と十分な考えられるのだが。米では政治宣伝悪用の危険性から厳重
規制なら、なおさら機密事項か。大傑作『ファイト・クラブ』にサ
ブリミナルがあったと聞くが、もっと大胆効果的にしてもらいたい。


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