セ・サ・ミ 日記

1999.3

3.24

<味覚春秋>は料亭やレストランにあるPR誌。塚本邦雄先生が15年もの長期連載中。今日はその毒舌食談義を聞く催し。まずやりだまは東京の有名レストラン<レカン>。店名が宝石箱の意味ならば、正しくは<レクラン>というべし。アボガドなどは許せない。アボカードが正式。この手の漫才ネタがえんえん続く。

3.22

<マルゴーは、ワインの東山魁夷だ>。エノテカの垂直テイスティング企画で得た私の印象。繊細でありながら、広がっていく豊かさがあり、かつ最後に豪華で華麗な印象をのこす。万人に人気がある点からもこの2者は共通していると思いません?反面きれいすぎてだめ、ワクワクさせるものがない。86、90年抜群。

3.20

三月大歌舞伎<仮名手本忠臣蔵>。仁左衛門、雁治郎。NHKに歩調をあわせた企画か。歌舞伎界では勘九郎のファンだが、大河ドラマは昔から全く見ない。仁左衛門が悪いわけではないが、どうも退屈。猿之助のスーパー歌舞伎も二度見たいとは。蜷川幸雄の舞台にはいつも歌舞伎の血が脈々と流れてるなと思うのだが。

3.19

<女と女と井戸の中>オーストラリア映画。女性監督、サマンサ・ラング。原題は<THE WELL>。日本語タイトルが勝ち。主人と召使いの密室劇のパターンといえばいいか。屈折した心理がテーマだが、やはりオーストラリアの荒涼とした原野がすざまじい。たとえ都会でもこの国はカスカスの印象があってごめんなさい。

3.18

<蜜柑白玉>。熊本の白玉屋新三郎の新作菓子。あんこをくるむ牛皮にオレンジがまぜこんであり、それを濃い緑の蜜柑の葉でつつんである。季節折々の白玉を考案し、<茗荷白玉>などどれもアイデアにすぐれ、完成度の高い和菓子の世界を作りあげている。通販はやむなく冷凍白玉であるが、その趣向は存分に楽しい。

3.17

大山崎山荘美術館へ。安藤忠雄氏設計の新館<地中の宝石箱>とモネの睡蓮が目玉。印象派嫌いでモネはバツだが、本館の河井寛次郎の陶芸、意外なホアン・ミロの彫刻や現代作家の展示が圧巻。白梅と紅梅が空奪いあう春の京都。梅の剪定は<女>を書くように。与謝野鉄幹の名は梅の枝の黒いことを指すとか。凛凛と。

3.16

<メサイア>ヘンデルのオラトリオを聴きに京都コンサートホールに。演奏もさることながら斬新な設計のホールに感心。シンフォニーホール、いずみホール、さらにもうすぐ堂々たる大津ホールが出来るらしい。各々に演奏会がひらかれ聴衆がいるというのが不思議。クラシックってそんな厚い土壌にささえられてます?

3.15

<じん六>京都北山の蕎麦屋。以前食べた時も繊細なそばを打つ人だなという印象をもったが、それがますます洗練されて田舎そばでもその技は卓越している。酒は土佐の<しらぎく>と滋賀八日市の<喜楽鳥>。あてのそばみそ、わさびづけ。最後のそば湯もとろりとする加減が実にいい。まだまだ先がたのしみな店だ。

3.14

<このたびは若乃花なる醜聞に初場所がざわ、番狂はせぞ><貴乃花いよよ美し 拗ねながら はた敗けながらなほ諦めず>。池田はるみさんの短歌はおもしろく、かつ気品がある。題材は相撲からたこやきまで意表をつく。思わずニヤッとさせるところがにくい。さすが大阪出身。サービス精神がいきとどいてまんなあ。

3.13

メニューイン死亡。その名前を聞くだけで空からバイオリンの響きが光を帯びてふりそそいでくるよう。学生時代ジャズばかり聴いており、グラッペリとのバイオリン競演で初めて知った。以後バッハ、ベートーベンのクラシックの名演を。アインシュタインは彼のコンサートを聴いて<神が存在することを確信した>と。

3.12

黒ごまがはいった餅パンが大人気。<ポン・テ・ケージョ><ビスコイ・デ・ポービルア>とかブラジル系のパン、スナックの名前で売られています。ちょっとお餅がまじってるような今までにない食感。料理好きな方なら製菓材料のお店でポンテケージョ用のミックス粉も。ネーミングの傑作は<モチモチモッチーニ>。

3.11

写真家、今道子さんから<蛸+メロン>のオリジナルプリント到着。歌集<くらはんか>の表紙に使わせてもらったものの超拡大版。15年程前<EAT>の写真集であまりの衝撃に硬直して以来の大ファン。もう何度も見た作品なのに、奇妙ないらだちと安堵がなまなましく皮膚感で迫ってくる。うなされてタコメロン。

3.10

スタンリー・キューブリック死亡。<2001年宇宙の旅>は勿論だが<時計仕掛けのオレンジ>はわが映画ベスト10。ほかのどのジャンルでも表現できない、だからこその映画の魅力をみせつけられた。ケン・ラッセル、ヴィスコンティと懐かしむのは老いたる証拠か。映画館のうす暗い迷宮はおいでおいでしている。

3.9

探偵ナイトスクープ>がわだまんに突然乱入。ご存知大阪発好視聴率番組。スタッフの電話がいきなり、ごま油を自分で絞ってつくりたいので今からごまを買いにいきます、という。予告なし。北野マコトと相談者の素人のおばちゃんがわだまんの店先で油コテコテの珍問答。先の展開知らず。放映日決まり次第報告を。

3.8

プーランク生誕100年記念コンサート。シンフォニーホールの空中に浮かぶパイプオルガンの圧倒的な響きではじまるティンパニのための協奏曲も少々荘厳さに欠けるし、イエスの死を悲しむマリアをテーマにしたスタバト・マーテルも250人の合唱は心に響かず。ティンパニより和太鼓を。合唱より声明が聴きたい。

3.4

<地卵に血の筋多し小正月>角川春樹。食の俳句塾、兼題<卵>。春樹凌ぐ句を期待するが。<職安の帰り卵とじうどん>磯菜。みな不発で卵孵らず。自由題で睡月<祖母逝きて雛膳の位置迷いけり>。有名な造幣局の通り抜けで桜の俳句募集。メンバーも参加することにして席題は<桜>。発表まで1番句は秘密。ふふ。

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