セ・サ・ミ 日記

−1999年9月−


1999.09.26

ショック塾、初の吟行は野分けの後の京都、曼殊院。「野分して草
木投地礼拝す」増湖。「時刻表四時台もあり柿たわわ」弥華藍。
「柿熟れて雨明るしや伊賀甲賀」翠胡。夕刻一献、熟柿色に酔いつ
つ「引戸出で月光浴の蜘蛛の糸」菜摘を、これ一番に決定。「今世
紀ふりかえるように京の旅」磯菜の挨拶にどっと逆選入れて、散会。


1999.09.25

日経のニュースによると、痛みを表す単位「hanage」を世界知覚認
識学会が承認。鼻の粘膜には個体差が少ないことに注目し、1本の
鼻毛を1ニュートンの力で引っこ抜いた時の痛みを「1ハナゲ」と
する。弁慶の泣きどころを打ったら40キロハナゲ、乳首のピアス
は3メガハナゲ、と数値化。ネットを駆け巡るガセネタ、まいった!


1999.09.23

「私のおそそは奈良漬おそそ合い間合い間にカスがある」「私のお
そそに野球場がござるピッチャキャッチャクッチャ音がする」いや、
中島らも先生やってくれました。さすが関西人。「オール読物」の
とっておきのワイ談。この手のエッセイはしゃれて小粋でエスプリ
で。しょおもな。やっぱ一回どっかくぐりぬけてこなあきまへんな。


1999.09.20

歌舞伎ファンではないが『歌右衛門伝説』にズブズブ引き込まれた。
著者、渡辺保の姿勢がいい。「私は歌右衛門の人生を書こうとは思
わなかった。私の見た舞台、それだけを書こう。ー中略ーだから取
材は一切しなかった。」驚くほど数々の舞台の再現で歌舞伎の問題
を語り、読み手は居ながらにして名舞台に酔った。お見事!渡辺屋!


1999.09.18

私の陶芸の先生、北野勝彦作陶展が三越ギャラリーで。案内状に掲
載の作品「AKARI」はよくあるランプシェイドのようなもので、失礼
ながら期待していなかったが、大皿、花入、徳利、迫力ある備前の
窯変の魅力に息を呑んだ。ぶちまけたエネルギーを炎が器に定着さ
せたのだろう。備前を通して焼き物の原初的悦楽を呼び起こされた。


1999.09.15

秋霖の京、円山公園の奥宿「吉永」での、P句会。初顔詩人、復帰
歌人。「大鐘楼照葉の網の底に在り」宮井。ご挨拶を正統に。「さ
わやかに現象論の庭を焼く」矢板。「睾丸の重きに耐える鯨かな」
大象。夕刻、河原町「静」に場変え。2分で1句の「袋回し」は即
興作句一周で14句。最高得点「信金を菊人形が取り囲む」晋太郎。


1999.09.13

食欲と性欲をテーマに中国と日本の文化的差異を語った『翡翠露』
は、唐亜明の開高健賞奨励賞作品。ラブストーリー仕立てだが、語
り口からして体質がちがう。上海のうんち入り肉まん、人肉まん旅
館など、おもろうてやがておそろし。熊手、象鼻、豹の胎児、鹿ペ
ニス、鹿アキレス健、駱駝瘤、猿頭、虎の膝関節。中華八珍うーん。


1999.09.10

『昆布売りでござる』を天満の座市の仲間、喜多條、段野両名が出
版。天満には、胡麻、海苔、椎茸の乾物問屋に混じって昆布屋も多
い。そのなかでも業界の異端児ふたりが「平成こんぶ塾」を作った
り、やんちゃを仕掛けている。これは戦前戦後に活躍した人物にス
ポットをあて時代資料をまとめた本。昆布てなに?ゆわれんうちに。


1999.09.06

物を残すのではなく、自分の仕事を目に見えなくする職人芸<洗い
屋>の神秘と凄みをひっぱりだした、村松友視著『俵屋の不思議』。
大阪人からと東京人からの京都への思いの落差は大きい。プロレス
の味方の村松氏、今回は通り一遍の俵屋の味方で終り。家庭画報の
連載はこの程度にして取材ネタは連作短編小説で、なんてセコイぞ。


1999.09.04

JCBの「ごまセミナー」。このようなテーマの会に出席しようと
思うのは、やはりごまフェチ。必ず生の胡麻を買って自分で煎り立
てを食べているという方が何人もいたのには感心。金ごまを愛用し
ている人が半数近くいたのもさすが。ごまのうま味はスリッキーで
はダメ、ごまに関して国産崇拝するのは意味がない、の2点を強調。


1999.09.03

「多感期やぶどうの図柄の文庫本」伏兎。秋めいて題は「ぶどう」
と「新涼」。初句、新涼やがずらりならぶなか「小休止新涼増幅岩
清水」水無に技あり。「阿波おどり出番待ってるジベタリアン」美
昌が意外にも間隙をぬって高得点。1年前作句経験ゼロからの進出
に、全員これ1番に文句ナシ。おなじアホならおどらにゃソンソン。


1999.09.02

日経夕刊、テレビの生き残り策。朝番組で唯一の関西ローカル番組
ABCテレビ「おはよう朝日です」が視聴率独走態勢。「あくまで
地域密着型、関西ネタで勝負している」と、久保田チーフプロデュー
サーは独自路線を強調、の記事。大阪人には情報の上澄みより日常
のコテコテか。けったいなワイン会のメンバー、久保田さんに乾杯。


1999.09.01

「胡麻の謎」井上宏生著。ごまに関する本はたくさんあるなかで、
これは読み物として出色。ごまはスパイスのひとつという観点から、
胡椒、鬱金と平行して、古代ギリシア、インド、中国と歴史をたど
る。史実が時代、国ごとに興味深く語られ、胡麻の不思議パワーが
うかびあがってくる仕掛。極めて日本食で、かつ国際食。ここが力。


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