週刊新潮2001年11月22日号
新句歌歳時記(多田道太郎)」より

島原や根深(ねぎ)の香もあり夜の雨

言水(ごんすい)
    根深(ねぶか)というとふつうは東国の、
    白いところ八分のネギ。京では九条葱といっ
    て八分の緑のところがうまい。奈良の人、言
    水は、京島原に近い九条葱を詠んだのか。そ
    れとも江戸の島原といわれた吉原のネブカを
    詠んだのか。どちらにせよ京都人のぼくには
    おもしろい句。「続都曲」

粉雪の端より加賀に入りけり

坂本俊子
    師「能村登四郎の句風をしっかりと身につ
    けた勉強家」(能村研三氏評)。されば「加賀」
    に入ると能登の方から登四郎の雪おこしの風
    が吹いてくるのでしょうか。「螢川」(平十三、
    本阿彌書店)。

雪近し走つて帰れ越後獅子

八木忠栄
    むかし富岡多恵子さんから走る人と評され
    た詩人。いつでもどこでもブルンブルンと走
    っているイメージ。越後の人であれば「越後獅
    子」の子どもも人ごとと思われず。一九九三
    年作。句集「雪やまず」(平十三、書肆山田)。

風はにはかに乱をはらみて吹くらむ
わづか五分国境わたらば

和田大象
    「百年を測る」の一首。本業のゴマを求めて、
    中近東を何度も渡ったことがあるの。それと
    も彼の発した電波が渡ったの。どちらにせよ、
    歌人の予言力のすさまじさに一驚。歌集「世
    紀末ビジネスマン」(平五、書肆季節社)。

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