和える力
“おいしい”を和える、“おいしい”に会える。ゆでたてのほうれん草に、香りのよいごまやおだしが混ざり合ってできる、とびきりおいしいごまあえを想像してみてください。素材と素材を合わせるだけの「たし算」ではなく、混ざり合って何倍もの価値が生まれる「かけ算」だから、想像を超えておいしいのです。
ごまが仲介する、「かけ算」のおいしさ
日本人は古来から、四季折々に変化する、豊かであり過酷でもある自然を畏怖し、受け入れ、文化を醸成してきました。どんなものも拒否せず受け入れ、そこから新しいアイデアや文化をつくりだす。私たちはそんな日本の文化を象徴する「和」に向き合い、また、日本食には欠かせない食材であるごまに向き合っています。
ごまだけでなく、たくさんの食材を組み合わせて、新しい「おいしい」を提案する。この“あえる瞬間”に、ごまはとても大事な役目をしてくれます。
「たし算」ではなく「かけ算」。ごまが素材の魅力を引き出します。
大阪・天満、人とものが行き交う地で
和田萬は、大阪・天満の地にあって140年以上、人と食の交流をお手伝いしてきました。天満は、歴史ある大阪天満宮の門前町で、古くから多くの参拝客でにぎわい、日本一の天神橋筋商店街も形成されてきました。江戸時代には北前船などを通じて全国から特産物があつまり、和田萬のある菅原町はそれらを売買する乾物屋が集積していました。また、すぐ前を流れる大川には大きな船乗り場があり、京都と大阪を結ぶ水運の要衝でもありました。そこはまた、熊野もうでをするための熊野古道の出発点の一つでもあります。
このように多くの人やものが集まる接合点に、和田萬は存在しています。街には乾物の香りが漂い、古い石畳や土蔵が残り、商売人たちの生活が息づくしっとりとした風情をかもしています。私たちはこの地で140年以上にわたって商いを続け、地域の方にお世話になりながら、人やものの交流を眺めてきました。だからこそ、私たちはこの地で新しい文化が生まれる場をつくれるよう、微力ながらその志を引き継いでいきたいと考えます。
熱量が交わる場所、カフェ「IRUAERU」
私たちがそこで交換するのは、商品の売買だけではありません。知らない人同士がそこで仲良くなり、意気投合し、熱量が組み合わさって新しい価値が生まれる。まるで最高の素材と素材が調理されて、新しい一皿が生まれるように。
和田萬は、和とごまを通して人と人が会える「場」をつくり、和の文化をはぐくみたいと考えて、大阪・天満の本社に2023年、カフェ「IRUAERU」をオープンしました。おいしい料理を作っている人がいて、おいしい食事やお茶があって、たくさんの「おいしい」に出会える。私たちは、そんな場所を提供し続けたいです。
人と人が出会い、熱量が交わる場所でありたい。
「ほどほどの心地よさ」をつくる
人と人が出会い、そこに新しいときめきが芽生えるためには、心地よい空間が不可欠です。体になじむ心地いい机やソファー、耳を撫でる心地いい音楽、手触りのいい温もりあるテーブルや食器、心を解きほぐす香り、そしておいしいお茶や食べもの。こうした要素が一つに溶け合う空間を、丁寧に段取りしています。
私たちが目指すのは、特別な日の豪華なディナーのような派手さではありません。毎日食べても決して飽きることのない「白いごはん」や、長い旅行から帰ってきたときに真っ先に口にしたくなる「だしのきいた温かい味噌汁」のような、満ち足りた「ほどほどの心地よさ」と安心感です。
しなやかで、おおらかな心で向き合う
「あえる力」を体現し続けるためには、私たち自身がしなやかで豊かな心を持たねばなりません。どんな困難な場面に直面しても決してあきらめず、他者と無闇に対立することのない姿勢。たとえ意見がぶつかった相手であっても、「敵」と書いて「とも(友)」と呼べるような、おおらかさとユーモアを常に心に秘めていたいのです。
ごまをひとふりすることで、素材と素材を仲介してその料理が何倍もおいしくなるごま和えのように、和田萬を通して人と人が出会い、新しい交流や文化を生み出すことこそ、和とごまに向き合い世界中に本当のおいしさを届ける私たちの役割だと確信します。
しなやかで、おおらかな心を大切にしています。