焙煎力
みためは何の変哲もないアイデアや素材に、人間が手を加えて新しい価値を生み出すこと。そこには使う人の気持ちを大切にし、その人の「おいしい」にたどりつくための経験に基づいた職人の直感が必要です。だからこそ、AIでは生み出せないあたたかみのある“ごま”ができあがり、心からの「おいしい」という言葉が引き出せます。
焙煎(ばいせん)とは何か
ごまは畑でできる植物の種です。採れた種のまま、“生”の状態では味も香りもないのですが、人間の手が加わることでうまみや豊かな風味が立ち上がります。この魔法のような風味を引き出す行為を、焙煎(ばいせん)といいます。炒る(いる)とも言いますよね。コーヒーやカカオ、ほうじ茶なども同じく焙煎して味や香りを引き出しています。
焙煎は、豆や穀物に水などを使わず熱を加えて、食品特有の味や香りを引き出すことです。乾燥した無味無臭のごまから、もともとそこに存在しなかった何百種類もの香り成分と言いしれない旨味が発生します。人間が自然の素材に介入して、そもそも食べられなかったものをおいしい食材に変える。自然のポテンシャルを引き出す大切な行為です。
焙煎の見極めは、最後まで職人の手と鼻で行います。
ひと粒ひと粒に向き合う、職人製法
和田萬のごま焙煎は、職人製法です。ごまの素材自体は無味無臭ですが、畑でとれた天然の産物ですからひと粒ひと粒ちがい、自然のゆらぎがあります。工業製品のように均一ではなく、でき具合もそれぞれ違ってくるのです。焙煎前には水で洗い、湿った状態から焙煎を始めます。その際の水分の具合でも仕上がりは違ってきますから、水で洗うところから私たちの焙煎は始まっているのです。
だから、ごまの焙煎工程は、巨大な工場でボタンを押したら自動でおいしく焙煎されたごまが出てくるものではありません。1日中、職人がごまに向き合い、焙煎機のそばについて最高の状態で仕上げます。製品は変わり続けます。おいしい製品ができて「これでいい」と思ったらいけません。常にもっとおいしいごまをつくろうという向上心を持ち続けることを是としています。
畑でとれた天然の産物だから、
ひと粒ひと粒に自然のゆらぎがあります。
焙煎職人は、よくしゃべる
ごまに対してそんな向き合い方をしている和田萬の焙煎職人は、実は現場でよくおしゃべりをします。ひとりで黙々と一意専心でものをつくる職人のイメージとは違って、隣の職人と焙煎したごまをお互いに見せて食べあい、意見交換をしています。
そしていつも、最終的に食べる人と料理をイメージして、そのまま食べて味が良いごまを良しとするのではなく、料理をして口にするときに味や香りの加減がもっともよい具合になるよう、考えて焙煎しています。
少量ずつ、時間をかけて
おいしくつくるために、私たちの工場では少量ずつ時間をかけて焙煎をしています。例えば、家で野菜炒めを料理しようとして、フライパンに材料を山盛り入れると、うまくかき混ぜられなくて焼きむらができてしまいます。これは巨大な製造機械でも同じです。機械を大きくするほど素材への熱の当たりにむらが出て、均一に焙煎ができません。だから私たちは、非効率であっても少量で時間をかけてじっくり焙煎します。
同じ焙煎機を使っている会社と比べて、私たちの1回の焙煎量は3分の1から4分の1です。途中でさわったり試食ができるオリジナルの焙煎機。ごまと焙煎機につきっきりになるため、操作する人をなるべく減らして大量生産している企業に比べてコストは高くなりますが、味や香りを何より優先しています。
妥協しない、素材選び
また私たちは、素材選びに妥協を許しません。種がわるければ、よい種を選んで生産者さんに渡し、これでつくってほしいとお願いします。何年もかけて、素材もよくしたいと考えます。
煎りあがったときにどうしたらベストのおいしさになるか、をイメージしています。それは、見た目や大きさなど外見ではなく、味や香り、食感などの実質第一です。
よい種を選び、生産者さんとともに何年もかけて素材を育てます。